ある日のことでございます
数十丁のコレクションのあれこれをご開帳いただき、全て皮張り直しを済ませてある古三線や珍品の数々を弾き比べ。
特に感動した3つを写真と共にご紹介します。
“星克の三線” …
言わずと知れた新安里屋ユンタの作詞者で著名な政治家でもあった星克氏、趣味で三線製作もされていたそうで、その中の1棹。
天の造りなどあまり美しいとは言えずモッタリした三線で響きも今ひとつ…、
ですが、あの名曲を作った方の手によるものと思うと重たく感じます。
試奏は星克作詞の「新港節」で。
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“知念大工製作の知念大工(?)”
王府時代、1740年作の三線。
現在の知念大工型とは異なりますが、特徴が誇張される前の古いフォルムだとか。
この年式は知念大工氏が王府の三線主取として在任していた時期であり、オリジナルの一つである可能性もあるとか。
意外に細身で非常に優雅な曲線を描いた棹でした。
糸巻きはオリジナルのまま、胴は黒く風化していてとても使えないので、
新胴をつけて試奏すると、細身なのにドンと低音が響き、
枯れた味わいながらも力強い素晴らしい音色でした。
試奏はこれしかないと「かぎやで風」にて。
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“遊女加那の三線”
辻遊郭の尾類であった加那と言う女性が、男性との別れに際して自分の三線を贈ったものだとか。
型は小真壁でスケールも心持ち短く、棹は演奏可能な限界まで細く細く削り込まれています。
象牙糸巻きが洒脱に組まれ、久葉ぬ骨型など細身の棹を特に好んだと言われる辻遊郭のイメージにぴったり。
逸話はフィクションかも知れませんが、本当に辻で使われていたのではと思わせる一棹でした。
音は細い割に高音が抜けず、低音は無論鳴らないイマイチな音色でしたが、名器ばかりでは無かろうと思います。
本島民謡好きとしては嬉しい出会いでした。
試奏は「サイレン節」、もひとつ「キザミ節」にて。
一二時三時四時五時と、六時のサイレン鳴るまでは、愛し主さんと腕枕…
眼福耳福の素晴らしいひとときでした。
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琉球王国時代の三線も修理すればまだまだ現役であることを目の当たりにし、
家宝と受け継がれる沖縄三線の底力を感じさせていただきました。